司法書士試験 過去問トレーニング vol.2

司法書士試験過去問一問一答

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司法書士過去問 令和2年度 午前の部 問5

問題

Aが、父親Bから代理権を授与されていないのに、Bの代理人として、第三者との間で、B所有の甲建物を売る契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。この事例に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、どれか。
なお、本件売買契約の締結は、商行為に当たらないものとする。

    1. 本件売買契約の締結後にBが追認も追認拒絶もしないまま死亡し、AがBを単独で相続した場合には、本件売買契約の効果は、当然にAに帰属する。
    2. 本件売買契約の締結後にBが追認も追認拒絶もしないまま死亡し、Aが他の相続人Cと共にBを相続した場合には、Cが追認しない限り、本件売買契約は、Aの相続分に相当する部分においても、当然には有効とならない。
    3. 本件売買契約の締結後にAが死亡し、BがAを単独で相続した場合であっても、本件売買契約は当然には有効とならない。
    4. 本件売買契約の締結後にAが死亡し、BがAを単独で相続した場合であっても、Bは、民法第117条第1項による無権代理人の責任を負わない。
    5. 本件売買契約の締結後にAが死亡し、Bが他の相続人Cと共にAを相続し、その後、CがBを単独で相続した場合には、Cは、本件売買契約の追認を拒絶することができる。




解説

 

    1. 正しい 下記判示の通り。

      最判昭40年6月18日 土地所有権移転登記抹消登記手続請求

      無権代理人が本人を相続し本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたつた場合においては、本人が自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解するのが相当

       


       

    2. 正しい 下記判示の通り。

      最判平5年1月21日 土地建物所有権移転登記抹消登記、土地所有権移転請求権仮登記抹消登記等

      無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するところ、無権代理行為の追認は、本人に対して効力を生じていなかった法律行為を本人に対する関係において有効なものにするという効果を生じさせるものであるから、共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではないと解すべきである。そうすると、他の共同相続人全員が無権代理行為の追認をしている場合に無権代理人が追認を拒絶することは信義則上許されないとしても、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。

       


       

    3. 正しい 下記判示の通り。

      最判昭37年4月20日 建物引渡所有権移転登記手続等請求

      無権代理人が本人を相続した場合においては、自らした無権代理行為につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、右無権代理行為は相続と共に当然有効となると解するのが相当であるけれども、本人が無権代理人を相続した場合は、これと同様に論ずることはできない。後者の場合においては、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である。

       


       

    4. 誤り 下記判示の通り、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあつたからといつて右債務を免れることはできないと解すべきである。

      最判昭48年7月3日 貸金請求

      民法一一七条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであつて、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあつたからといつて右債務を免れることはできないと解すべきである。

      民法117条(権限の定めのない代理人の権限)

      1項 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
      2項 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
       一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
       二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
       三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

       


       

    5. 誤り 下記判示の通り本肢の場合、Cに追認を拒絶する余地はない。

      最判昭63年3月1日 所有権移転登記抹消登記手続請求事件

      無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場合においては、当該相続人は本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当である。

       

 






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