行政書士試験 過去問トレーニング vol.105

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行政書士過去問 平成29年問31

問題

物権的請求権等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

    1. Aが所有する甲土地の上に、Bが権原なく乙建物を建設してこれをCに譲渡した場合、無権原で乙建物を建設することによってAの土地所有権を侵害したのはBであるから、AはBに対してのみ乙建物の取去を求めることができる。
    2. 第三者が抵当不動産を不法占有することによって同不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求権が認められるが、抵当権は占有を目的とする権利ではないため、抵当権者が占有者に対し直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることは常にできない。
    3. 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還を請求することはできるが、損害の賠償を請求することはできない。
    4. 第三者が賃貸不動産を不法占有している場合、賃借人は、その賃借権が対抗要件を具備しているか否かを問わず、その不法占有者に対して、当該不動産に関する賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができる。
    5. Dが所有する丙土地の上に、Eが権原なく丁建物を建設し、自己所有名義で建物保存登記を行った上でこれをFに譲渡したが、建物所有権登記がE名義のままとなっていた場合、Dは登記名義人であるEに対して丁建物の収去を求めることができる。

解説

 

    1. 妥当ではない ”AはBに対してのみ”としている点が誤り、判例はCに対して建物収去・土地明渡しを請求する事を否定していない。

      建物収去土地明渡 最判平成6年2月8日

      土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去・土地明渡しを請求するには、現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者を相手方とすべきである。

       


    2. 妥当ではない 判例では抵当権に基づく妨害排除請求と抵当権者は,占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるとしている。

      建物明渡請求事件 最判平成17年3月10日

      抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者についても,その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,当該占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができるものというべきである。なぜなら,抵当不動産の所有者は,抵当不動産を使用又は収益するに当たり,抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており,抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないからである。
       また,抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり,抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。


    3. 妥当ではない 民法200条1項より、本肢のケースの場合はその物の返還及び損害の賠償を請求することができる。

      民法200条

      1項 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
      2項 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。


    4. 妥当ではない 対抗要件を具備した場合のみ妨害排除請求権を行う事ができる。

      民法605条の4

      1項 不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
       一号 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
       二号 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求


    5. 妥当である 判示の通りである。

      建物収去土地明渡 最判平成6年2月8日

      他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には、たとい建物を他に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、土地所有者に対し、右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である。


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