行政書士試験 過去問トレーニング vol.86

行政書士試験過去問を一問一答の無料トレーニング公開中!

▼詳しくは下記リンクで!▼

行政書士過去問 一問一答トレーニング

行政書士過去問 平成30年問34

問題

離婚に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

    1. 離婚における財産分与は、離婚に伴う精神的苦痛に対する損害の賠償も当然に含む趣旨であるから、離婚に際し財産分与があった場合においては、別途、離婚を理由とする慰謝料の請求をすることは許されない。
    2. 離婚に際して親権者とならず子の監護教育を行わない親には、子と面会・交流するためのいわゆる面接交渉権があり、この権利は親子という身分関係から当然に認められる自然権であるから、裁判所がこれを認めない判断をすることは憲法13条の定める幸福追求権の侵害に当たる。
    3. 父母が協議上の離婚をする場合に、その協議でその一方を親権者として定めなかったにもかかわらず、誤って離婚届が受理されたときであっても、当該離婚は有効に成立する。
    4. 民法の定める離婚原因がある場合には、当事者の一方は、その事実を主張して直ちに家庭裁判所に対して離婚の訴えを提起することができ、訴えが提起されたときは、家庭裁判所は直ちに訴訟手続を開始しなければならない。
    5. 夫婦の別居が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及び、その夫婦の間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により極めて苛酷な状態に置かれる等著しく社会的正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの離婚請求であるとの一事をもって離婚が許されないとすることはできない。

解説

 

    1. 誤り 財産分与がなされたからといつて、その後不法行為を理由として別途慰藉料の請求をすることは妨げられないというべきである。

      慰藉料請求 最判昭和46年7月23日

      財産分与の請求権は、相手方の有責な行為によつて離婚をやむなくされ精神的苦痛を被つたことに対する慰藉料の請求権とは、その性質を必ずしも同じくするものではない。したがつて、すでに財産分与がなされたからといつて、その後不法行為を理由として別途慰藉料の請求をすることは妨げられないというべきである。


    2. 誤り 本肢のケースは最高裁は民法七六六条一項又は二項の解釈適用の問題であるとした。

      面接交渉申立棄却審判に対する抗告棄却の決定に対する抗告 最判昭和59年7月6日

      協議上の離婚をした際に長女の親権者とされなかつた同女の父である抗告人に同女と面接交渉させることは、同女の福祉に適合しないとして面接交渉を認めなかつた原決定は、憲法一三条に違反すると主張するが、その実質は、家庭裁判所の審判事項とされている子の監護に関する処分について定める民法七六六条一項又は二項の解釈適用の誤りをいうものにすぎず、民訴法四一九条ノ二所定の場合にあたらないと認められる

      民法766条

      1項 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
      2項 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
      3項 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
      4項 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

      旧民事訴訟法419条の二

      1項 不服ヲ申立ツルコトヲ得サル決定及命令ニ対シテハ其ノ裁判ニ憲法ノ解釈ノ誤アルコト其ノ他憲法ノ違背アルコトヲ理由トスルトキニ限リ最高裁判所ニ特ニ抗告ヲ為スコトヲ得


    3. 妥当である 民法765条1項及び民法819条1項より親権者を定めない離婚届は受理することができない。しかし民法765条2項より誤って離婚届が受理された場合は当該離婚は有効に成立する。

      民法765条

      1項 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定及び第八百十九条第一項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
      2項 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。

      民法819条

      1項 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
      2項 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
      3項 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
      4項 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
      5項 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
      6項 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。


    4. 誤り 離婚の訴え、婚姻・縁組みの取消、認知の訴えは調停前置主義が取れられている。そのため、調停を経ずに家庭裁判所に対して離婚の訴えを提起することは出来ない。

      家事事件手続法244条

      家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)について調停を行うほか、この編の定めるところにより審判をする。

      家事事件手続法257条

      1項 第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
      2項 前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
      3項 裁判所は、前項の規定により事件を調停に付する場合においては、事件を管轄権を有する家庭裁判所に処理させなければならない。ただし、家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、事件を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に処理させることができる。


    5. 妥当である 判示の通りである。

      離婚 最判昭和62年9月2日

      有責配偶者からされた離婚請求であつても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできないものと解するのが相当である


行政書士の過去問を一問一答形式で無料公開しております。

詳しくは下記リンクで!

行政書士過去問 一問一答トレーニング