行政書士試験 過去問トレーニング vol.179

行政書士過去問一問一答

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行政書士過去問 平成27年問34

問題

A(3歳)は母親Bが目を離した隙に、急に道路へ飛び出し、Cの運転するスピード違反の自動車に轢(ひ)かれて死亡した。CがAに対して負うべき損害賠償額(以下、「本件損害賠償額」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

    1. 本件損害賠償額を定めるにあたって、A自身の過失を考慮して過失相殺するには、Aに責任能力があることが必要であるので、本件ではAの過失を斟酌することはできない。
    2. 本件損害賠償額を定めるにあたって、A自身の過失を考慮して過失相殺するには、Aに事理弁識能力があることは必要でなく、それゆえ、本件ではAの過失を斟酌することができる。
    3. 本件損害賠償額を定めるにあたって、BとAとは親子関係にあるが、BとAとは別人格なので、Bが目を離した点についてのBの過失を斟酌することはできない。
    4. 本件損害賠償額を定めるにあたって、Aが罹患(りかん)していた疾患も一因となって死亡した場合、疾患は過失とはいえないので、当該疾患の態様、程度のいかんにかかわらずAの疾患を斟酌することはできない。
    5. 本件損害賠償額を定めるにあたって、Aの死亡によって親が支出を免れた養育費をAの逸失利益から控除することはできない。




解説

 

    1. 妥当でない 下記判示の通り、未成年者に責任能力があることが必要としている点が妥当ではない。

      最大判昭39年6月24日 損害賠償等請求

      被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である

       


       

    2. 妥当ではない 下記判示の要旨の通り、未成年者に事理弁識能力があることは必要ではないとしている点が妥当ではない。

      最大判昭39年6月24日 損害賠償等請求

      被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である

       


       

    3. 妥当ではない 下記判示の通り、B(母親)の過失を斟酌することはできないとする点が妥当ではない。

      最判昭42年6月27日 慰藉料請求

      民法七二二条二項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべきではあるが、本件のように被害者本人が幼児である場合において、右にいう被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解する

      民法722条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)

      1項 第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
      2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

       


       

    4. 妥当ではない 下記判示の通り、Aの疾患を斟酌することはできないとする点が妥当ではない。 

      最判平4年6月25日 損害賠償

      被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法七二二条二項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができるものと解するのが相当である。

      民法722条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)

      1項 第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
      2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

       

       


       

    5. 妥当である 下記判示の通り。

      最判昭53年10月20日 損害賠償

      交通事故により死亡した幼児の損害賠償債権を相続した者が一方で幼児の養育費の支出を必要としなくなつた場合においても、右養育費と幼児の将来得べかりし収入との間には前者を後者から損益相殺の法理又はその類推適用により控除すべき損失と利得との同質性がなく、したがつて、幼児の財産上の損害賠償額の算定にあたりその将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきものではないと解するのが相当である

       

       

 






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