行政書士試験 過去問トレーニング vol.178

行政書士過去問一問一答

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行政書士過去問 平成27年問30

問題

留置権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

    1. Aは自己所有の建物をBに売却し登記をBに移転した上で、建物の引渡しは代金と引換えにすることを約していたが、Bが代金を支払わないうちにCに当該建物を転売し移転登記を済ませてしまった場合、Aは、Cからの建物引渡請求に対して、Bに対する代金債権を保全するために留置権を行使することができる。
    2. Aが自己所有の建物をBに売却し引き渡したが、登記をBに移転する前にCに二重に売却しCが先に登記を備えた場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することができる。
    3. AがC所有の建物をBに売却し引き渡したが、Cから所有権を取得して移転することができなかった場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することはできない。
    4. Aが自己所有の建物をBに賃貸したが、Bの賃料不払いがあったため賃貸借契約を解除したところ、その後も建物の占有をBが続け、有益費を支出したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する有益費償還請求権を保全するために留置権を行使することはできない。
    5. Aが自己所有の建物をBに賃貸しBからAへ敷金が交付された場合において、賃貸借契約が終了したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する敷金返還請求権を保全するために、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできない。




解説

 

    1. 妥当である 下記判示の通り。

      最判昭和47年11月16日 建物明渡請求 

      留置権が成立したのち債務者からその目的物を譲り受けた者に対しても、債権者がその留置権を主張しうることは、留置権が物権であることに照らして明らかである

       


       

    2. 妥当ではない 下記判示の要旨の通り、本肢の場合はBはAに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することができない。

      昭和43年3月21日  家屋明渡請求 裁判要旨より

       不動産の二重売買において、第二の買主のため所有権移転登記がされた場合、第一の買主は、第二の買主の右不動産の所有権に基づく明渡請求に対し、売買契約不履行に基づく損害賠償債権をもつて、留置権を主張することは許されない。

       


       

    3. 妥当である 下記判示の通り。

       昭和50年7月29日  家屋明渡請求

      他人の物の売買における買主は、その所有権を移転すべき売主の債務の履行不能による損害賠償債権をもつて、所有者の目的物返還請求に対し、留置権を主張することは許されないものと解するのが相当である。

       


       

    4. 妥当である 下記判示、民法295条に規定されている通り。賃貸借契約を解除後に支出した有益費の償還請求権については、民法295条2項の類推適用により、留置権を主張することができない。

      最判昭和46年7月16日 家屋明渡等請求

      亡Dが、本件建物の賃貸借契約が解除された後は右建物を占有すべき権原のないことを知りながら不法にこれを占有していた旨の原判決の認定・判断は、挙示の証拠関係に徴し首肯することができる。そして、Dが右のような状況のもとに本件建物につき支出した有益費の償還請求権については、民法二九五条二項の類推適用により、上告人らは本件建物につき、右請求権に基づく留置権を主張することができないと解すべきである

      民法295条(留置権の内容)

      1項 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
      2 項 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない

       

       


       

    5. 妥当である 下記判示の通り、Aに対する敷金返還請求権を保全するために、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできない。

      最判昭和49年9月2日 家屋明渡請求

      賃貸人は、特別の約定のないかぎり、賃借人から家屋明渡を受けた後に前記の敷金残額を返還すれば足りるものと解すべく、したがつて、家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係にたつものではないと解するのが相当であり、このことは、賃貸借の終了原因が解除(解約)による場合であつても異なるところはないと解すべきである。そして、このように賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合にあつては、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもつて家屋につき留置権を取得する余地はないというべきである。

       

       

 






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