行政書士試験 過去問トレーニング vol.129

行政書士試験過去問を一問一答の無料トレーニング公開中!

▼詳しくは下記リンクで!▼

行政書士過去問 一問一答トレーニング

行政書士過去問 令和元年問34

問題

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

    1. 精神障害者と同居する配偶者は法定の監督義務者に該当しないが、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行い、その態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、当該配偶者は法定の監督義務者に準ずべき者として責任無能力者の監督者責任を負う。
    2. 兄が自己所有の自動車を弟に運転させて迎えに来させた上、弟に自動車の運転を継続させ、これに同乗して自宅に戻る途中に、弟の過失により追突事故が惹起された。その際、兄の同乗後は運転経験の長い兄が助手席に座って、運転経験の浅い弟の運転に気を配り、事故発生の直前にも弟に対して発進の指示をしていたときには、一時的にせよ兄と弟との間に使用関係が肯定され、兄は使用者責任を負う。
    3. 宅地の崖地部分に設けられたコンクリートの擁壁の設置または保存による瑕疵が前所有者の所有していた際に生じていた場合に、現所有者が当該擁壁には瑕疵がないと過失なく信じて当該宅地を買い受けて占有していたとしても、現所有者は土地の工作物責任を負う。
    4. 犬の飼主がその雇人に犬の散歩をさせていたところ、当該犬が幼児に噛みついて負傷させた場合には、雇人が占有補助者であるときでも、当該雇人は、現実に犬の散歩を行っていた以上、動物占有者の責任を負う。
    5. 交通事故によりそのまま放置すれば死亡に至る傷害を負った被害者が、搬入された病院において通常期待されるべき適切な治療が施されていれば、高度の蓋然性をもって救命されていたときには、当該交通事故と当該医療事故とのいずれもが、その者の死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係がある。したがって、当該交通事故における運転行為と当該医療事故における医療行為とは共同不法行為に当たり、各不法行為者は共同不法行為の責任を負う。

解説

 

    1. 妥当である 下記判示の通り。    

      損害賠償請求事件 最判平成28年3月1日

      法定の監督義務者に該当しない者であっても,責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし,第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には,衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視してその者に対し民法714条に基づく損害賠償責任を問うことができるとするのが相当であり,このような者については,法定の監督義務者に準ずべき者として,同条1項が類推適用されると解すべきである

       


    2. 妥当である 下記判示の通り。 

      損害賠償本訴、同反訴 最判昭和56年11月27日

      原審が適法に確定したところによれば、上告人は、本件事故の当日、出先から自宅に連絡し、弟の訴外Dをして上告人所有の本件自動車を運転して迎えに来させたうえ、更に、右訴外人をして右自動車の運転を継続させこれに同乗して自宅に戻る途中、本件事故が発生したものであるところ、右同乗後は運転経験の長い上告人が助手席に坐つて、運転免許の取得後半年位で運転経歴の浅い右訴外人の運転に気を配り、事故発生の直前にも同人に対し「ゴー」と合図して発進の指示をした、というのである。
       右事実関係のもとにおいては、上告人は、一時的にせよ右訴外人を指揮監督して、その自動車により自己を自宅に送り届けさせるという仕事に従事させていたということができるから、上告人と右訴外人との間に本件事故当時上告人の右の仕事につき民法七一五条一項にいう使用者・被用者の関係が成立していたと解するのが相当である。

       


    3. 妥当である 工作物の所有者は、その工作物の瑕疵が前所有者の所有の際に生じていたものであり、瑕疵がないと過失なく信じて買い受けた場合であっても、民法717条の責任を負うとしている。

      民法717条 (土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)

      1項 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
      2項 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
      3項 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

       


    4. 妥当でない 占有補助者は民法718条2項に規定されている、占有者に代わって動物を管理する者には該当しない。

      民法718条 (動物の占有者等の責任)

      1項 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
      2項 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。

       


    5. 妥当である  下記判示の通りである。

      損害賠償請求事件 最判平成13年3月13日

      本件交通事故により,Eは放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの,事故後搬入された被上告人病院において,Eに対し通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば,高度の蓋然性をもってEを救命できたということができるから,本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが,Eの死亡という不可分の一個の結果を招来し,この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって,【要旨1】本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから,各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから,被害者との関係においては,各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し,各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である

       

 


行政書士の過去問を一問一答形式で無料公開しております。

詳しくは下記リンクで!

行政書士過去問 一問一答トレーニング