行政書士試験 過去問トレーニング vol.128

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行政書士過去問 令和元年問33

問題

甲建物(以下「甲」という。)を所有するAが不在の間に台風が襲来し、甲の窓ガラスが破損したため、隣りに住むBがこれを取り換えた場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

    1. BがAから甲の管理を頼まれていた場合であっても、A・B間において特約がない限り、Bは、Aに対して報酬を請求することができない。
    2. BがAから甲の管理を頼まれていなかった場合であっても、Bは、Aに対して窓ガラスを取り換えるために支出した費用を請求することができる。
    3. BがAから甲の管理を頼まれていなかった場合であっても、Bが自己の名において窓ガラスの取換えを業者Cに発注したときは、Bは、Aに対して自己に代わって代金をCに支払うことを請求することができる。
    4. BがAから甲の管理を頼まれていなかった場合においては、BがAの名において窓ガラスの取換えを業者Dに発注したとしても、Aの追認がない限り、Dは、Aに対してその請負契約に基づいて代金の支払を請求することはできない。
    5. BがAから甲の管理を頼まれていた場合であっても、A・B間において特約がなければ、窓ガラスを取り換えるに当たって、Bは、Aに対して事前にその費用の支払を請求することはできない。

解説

前提

    • 選択肢1、5 準委任にあたる

      民法643条 (委任)

      委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

      民法656条 (準委任)

      この節(第十節 委任)の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

    • 選択肢2~4 事務管理にあたる

      民法697条 (事務管理)

      1項 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
      2項 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。

 


 

    1. 妥当である  BがAから甲の管理を頼まれことは民法656条の準委任にあたり、さらに民法648条1項に規定されている通り、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。  

      民法648条 (受任者の報酬)

      1項 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
      2項 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。
      3項 受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
       一号 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
       二号 委任が履行の中途で終了したとき。

      民法656条 (準委任)

      この節(第十節 委任)の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

       


    2. 妥当である 民法702条1項に規定されている通り  

      民法702条

      1項 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
      2項 第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。
      3項 管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。

       


    3. 妥当である 民法650条2項、702条2項に規定されている通り

      民法650条 (受任者による費用等の償還請求等)

      1項 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
      2項 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
      3項 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

      民法702条 管理者による費用の償還請求等

      1項 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
      2項 第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。
      3項 管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。

       


    4. 妥当である 下記判示の通りである。

      所有権移転登記手続請求 最判昭和36年11月30日

      事務管理は、事務管理者と本人との間の法律関係を謂うのであつて、管理者が第三者となした法律行為の効果が本人に及ぶ関係は事務管理関係の問題ではない。従つて、事務管理者が本人の名で第三者との間に法律行為をしても、その行為の効果は、当然には本人に及ぶ筋合のものではなく、そのような効果の発生するためには、代理その他別個の法律関係が伴うことを必要とするものである。

       


    5. 妥当ではない 民法649条1に規定されている通り、委任事務を処理するについて費用を要するときは委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならないとしているい。その際特約の有無は関係ない。

      民法649条 (受任者による費用の前払請求)

      委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない

       

 


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