司法書士試験 過去問トレーニング vol.5

司法書士試験過去問一問一答

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司法書士過去問 令和2年度 午前の部 問7

問題

不動産の物権変動に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、どれか。

    1. Aがその所有する甲土地をBに売却したものの、その旨の登記がされない間に、Bが甲土地をCに売却したときは、Cは、Aに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
    2. 成年被後見人であるAがその所有する甲土地をBに売却してその旨の登記がされ、Bが、Aが成年被後見人であることを知らないCに甲土地を売却してその旨の登記がされた後、AがBとの間の売買契約を取り消したときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権のAへの復帰を対抗することができない。
    3. Aがその所有する甲土地をBに売却したが、CがBを害する目的でAから甲土地を購入してその旨の登記がされた後、事情を知らないDがCから甲土地を購入してその旨の登記がされたときは、Bは、Dに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができない。
    4. 甲土地を所有するAが死亡し、その相続人が子B及びCである場合において、Bの債権者Dが、B及びCが甲土地を共同相続したものとして代位による所有権の移転の登記をした上で、Bの持分を差し押さえてその旨の登記がされた後、Bが相続の放棄をしたときは、Cは、Dに対し、単独での甲土地の所有権の取得を対抗することができない。
    5. Aがその所有する甲土地をBの詐欺によりBに売却してその旨の登記がされ、Bが詐欺の事実について善意無過失のCに甲土地を売却してその旨の登記がされた後、AがBとの間の売買契約を取り消したときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権のAへの復帰を対抗することができない。




解説

 

    1. 正しい Aは実質的無権利者であるため、民法177条の第三者には該当しない。そのため、Cは、Aに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができる。

      民法177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

      不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

      土地所有権移転登記手続請求

      民法一七七条に所謂第三者たるには、係争土地に対しなんらか正当の権利を有することを要し、なんら正当の権利を有せず単に該土地を譲渡した前所有者にすぎない如きものは登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有するものといえないことは、すでに大審院判例(昭和三年(オ)第二〇一号同年七月二日判決、法律新聞二八九八号一四頁参照)の示すところであり、当裁判所もこれを支持し変更する要を見ない。

       


       

    2. 誤り 制限行為能力者であることを理由として、AがBとの間の売買契約を取り消したとしても、第三者保護(C)の規定は存在しない。そのため、民法121条に規定されている通り、本肢の売買契約は初めから無効であったものとみなされて、Cは、Aに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができない。

      民法121条(取消しの効果)

      取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

       


       

    3. 正しい Dは、Bに対する関係でD自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができる。 

      最判平成8年10月29日 公道確認等

      所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、丙が当該不動産を甲から二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができるものと解するのが相当である。

       


       

    4. 誤り 民法939条、および下記判示の通り、Bは初めから相続人とならなかったものとみなされ、Cは、Dに対し、単独での甲土地の所有権の取得を対抗することができる。

      民法939条(相続の放棄の効力)

      相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

      最判昭和42年1月20日 第三者異議

      家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法九三八条)、相続人は相続開始時に遡ぼつて相続開始がなかつたと同じ地位におかれることとなり、この効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである。

       


       

    5. 正しい 民法96条3項に規定されている通り。

      民法96条(詐欺又は強迫)

      1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
      2項 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
      3項 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

       

 






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