行政書士試験 過去問トレーニング vol.186

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行政書士過去問 平成26年問14

問題

行政不服審査法に基づく審査請求の裁決と取消訴訟との関係について、妥当な記述はどれか。

    1. 審査請求の裁決に不服がある審査請求人は、これに対して取消訴訟を提起して争うことができるが、それ以外の者は、裁決に不服があっても取消訴訟を提起することはできない。
    2. 違法な処分に対する審査請求について、審査庁が誤って棄却する裁決をした場合、審査請求人は、裁決取消訴訟により、元の処分が違法であったことを理由として、棄却裁決の取消しを求めることができる。
    3. 審査請求の裁決には理由を付さなければならないが、付された理由が不十分であったとしても、裁決に対する取消訴訟において、理由の記載の不備のみのために裁決が取消されることはない。
    4. 適法な審査請求が審査庁により誤って却下された場合には、審査請求の前置が取消訴訟の訴訟要件とされていても、審査請求人は、審査請求に対する実体的な裁決を経ることなく、元の処分に対する取消訴訟を提起できる。
    5. 処分に対して審査請求がなされた場合においても、当該処分の取消訴訟の出訴期間については、当該処分を知った日の翌日が起算日とされ、この期間が経過すれば、審査請求の手続の途中でも、当該処分に不可争力が生じる。




解説

 

    1. 妥当ではない 行政手続法9条1、2項に規定されている通り、処分又は裁決の相手方以外の者であっても原告となる余地を残している。

      行政事件訴訟法9条(原告適格)

      1項 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
      2項 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

       


       

    2. 妥当ではない 行政事件訴訟法10条2項に規定されている通り、裁決の取消しの訴えにおいては原処分の違法性を争う事が出来ない。

      行政事件訴訟法10条(取消しの理由の制限)

      1項 取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。
      2項 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。

       


    3. 妥当ではない 下記判示の通り、理由の記載の不備のみのために裁決が取消される可能性は否定できない。

      最判昭和32年1月31日 農地買収並びに売渡決定無効確認請求

      論旨は異議に対する決定及び訴願に対する裁決には必ずその理由を付すべきであるに拘わらず、本件決定及び裁決にはその理由の説示なく要式行為としての方式を欠如するものであり当然無効というべく、従つてかかる決定及び裁決を経てその後に行われた本件買収処分及び売渡処分も亦その違法性を承継し当然に無効であるというに帰着する。

      行政不服審査法50条(裁決の方式)

      1項 裁決は、次に掲げる事項を記載し、審査庁が記名押印した裁決書によりしなければならない。
      一 主文
      二 事案の概要
      三 審理関係人の主張の要旨
      四 理由(第一号の主文が審理員意見書又は行政不服審査会等若しくは審議会等の答申書と異なる内容である場合には、異なることとなった理由を含む。)
      2項 第四十三条第一項の規定による行政不服審査会等への諮問を要しない場合には、前項の裁決書には、審理員意見書を添付しなければならない。
      3項 審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をする場合には、裁決書に再審査請求をすることができる旨並びに再審査請求をすべき行政庁及び再審査請求期間(第六十二条に規定する期間をいう。)を記載して、これらを教示しなければならない。

       


    4. 妥当である 下記判示の通りである。

      所得税更正処分取消請求 最判小昭和36年7月21日

      上告人の請求は更正処分の取消であるから同法五一条により原則として再調査決定、審査決定を経なければ提起できないのであるが、国税庁長官又は国税局長が誤つてこれを不適法として却下した場合には本来行政庁は処分について再審理の機会が与えられていたのであるから、却下の決定であつてもこれを前記規定にいう審査の決定にあたると解すべきことは原判示のとおりである。(中略)不適法として却下すべきでない場合に国税局長が誤つて却下した場台は前述説明の如く同法五一条の審査の決定があつたものとして適法に出訴ができるものと解すべきである。

      行政事件訴訟法8条(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)

      1項 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。
      2項 前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
       一 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。
       二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。
       三 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。
      3項 第一項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。

       


    5. 妥当ではない  行政手続法14条3項に規定されている通り、「当該処分を知った日の翌日」ではなく「裁決があつたことを知つた日」が起算日

      行政事件訴訟法14条(出訴期間)

      1項 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
      2項 取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
      3項 処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

       

 






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