行政書士試験 過去問トレーニング vol.126

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行政書士過去問 令和元年問29

問題

動産物権変動に関する次の記述のうち、民法等の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

    1. Aは自己所有の甲機械をBに譲渡したが、その引渡しをしないうちにAの債権者であるCが甲機械に対して差押えを行った。この場合において、Bは、差押えに先立って甲機械の所有権を取得したことを理由として、Cによる強制執行の不許を求めることはできない。
    2. Dは自己所有の乙機械をEに賃貸し、Eはその引渡しを受けて使用収益を開始したが、Dは賃貸借期間の途中でFに対して乙機械を譲渡した。FがEに対して所有権に基づいて乙機械の引渡しを求めた場合には、Eは乙機械の動産賃借権をもってFに対抗することができないため、ほD・F間において乙機械に関する指図による占有移転が行われていなかったとしても、EはFの請求に応じなければならない。
    3. Gは自己所有の丙機械をHに寄託し、Hがその引渡しを受けて保管していたところ、GはIに対して丙機械を譲渡した。この場合に、HがGに代って一時丙機械を保管するに過ぎないときには、Hは、G・I間の譲渡を否認するにつき正当な利害関係を有していないので、Iの所有権に基づく引渡しの請求に応じなければならない。
    4. Jは、自己所有の丁機械をKに対して負っている貸金債務の担保としてKのために譲渡担保権を設定した。動産に関する譲渡担保権の対抗要件としては占有改定による引渡しで足り、譲渡担保権設定契約の締結後もJが丁機械の直接占有を継続している事実をもって、J・K間で占有改定による引渡しが行われたものと認められる。
    5. 集合動産譲渡担保が認められる場合において、種類、量的範囲、場所で特定された集合物を譲渡担保の目的とする旨の譲渡担保権設定契約が締結され、占有改定による引渡しが行われたときは、集合物としての同一性が損なわれない限り、後に新たにその構成部分となった動産についても譲渡担保に関する対抗要件の効力が及ぶ。

解説

 

    1. 妥当である Bは甲機械の引き渡しを受けていないため、第三者Cに対抗することは出来ない。 

      民法178条

      動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

       


    2. 妥当ではない 本肢の場合はEは民法184条の第三者にあたり(大判大正4年2月2日)、指図による占有移転が行われていなかった場合はEはFの請求に応じる必要はない。 

      民法184条

      代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。

       


    3. 妥当である 

      動産引渡請求 最判昭和29年8月31日

      上告人が昭和二五年四月本件動産をDに売り渡し即時その引渡をなすとともに、同人の寄託によりこれを保管しているものであること、Dは同年五月右物件を被上告人に売り渡したがその引渡は行われなかつたことをそれぞれ確定し、被上告人の所有権に基く右動産の引渡請求を認容したものである。右事実によれは上告人は被上告人に本件物件を譲渡した訴外Dに代つて一時右物件を保管するに過ぎないものであつて、かかる者は右譲渡を否認するに付き正当の利害関係を有するものということは出来ない。従つて民法一七八条にいう第三者に該当しないと解すべく原判旨は相当であつて論旨は採用することができない

       


    4. 妥当である 

      動産引渡請求 最判昭和30年6月2日

      売渡担保契約がなされ債務者が引き続き担保物件を占有している場合には、債務者は占有の改定により爾後債権者のために占有するものであり、従つて債権者はこれによつて占有権を取得するものであると解すべき

       


    5. 妥当である

      物件引渡 最判昭和54年2月15日

      構成部分の変動する集合動産についても、その種類、所在場所及び量的範囲を指定するなどなんらかの方法で目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうるものと解するのが相当である。

      第三者異議 最判昭和62年11月10日

      集合物を目的とする譲渡担保権設定契約が締結され、債務者がその構成部分である動産の占有を取得したときは債権者が占有改定の方法によつてその占有権を取得する旨の合意に基づき、債務者が右集合物の構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、債権者は、当該集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至つたものということができ、この対抗要件具備の効力は、その後構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物について及ぶものと解すべきである。

       

 


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