行政書士試験 過去問トレーニング vol.80
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行政書士過去問 令和元年問7
問題
動物愛護や自然保護に強い関心を持つ裁判官A氏は、毛皮の採取を目的とした野生動物の乱獲を批判するため、休日に仲間と語らって派手なボディペインティングをした風体でデモ行進を行い、その写真をソーシャルメディアに掲載したところ、賛否両論の社会的反響を呼ぶことになった。事態を重く見た裁判所は、A氏に対する懲戒手続を開始した。
このニュースに関心を持ったBさんは、事件の今後の成り行きを予測するため情報収集を試みたところ、裁判官の懲戒手続一般についてインターネット上で次の1~5の出所不明の情報を発見した。このうち、法令や最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
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- 裁判官の身分保障を手続的に確保するため、罷免については国会に設置された弾劾裁判所が、懲戒については独立の懲戒委員会が決定を行う。
- 裁判官の懲戒の内容は、職務停止、減給、戒告または過料とされる。
- 司法権を行使する裁判官に対する政治運動禁止の要請は、一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請よりも強い。
- 政治運動を理由とした懲戒が憲法21条に違反するか否かは、当該政治運動の目的や効果、裁判官の関わり合いの程度の3点から判断されなければならない。
- 表現の自由の重要性に鑑みれば、裁判官の品位を辱める行状があったと認定される事例は、著しく品位に反する場合のみに限定されなければならない。
解説
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- 妥当でない 裁判官を罷免する場合は両議院の議員で組織する弾劾裁判所である。また裁判官の分限裁判は懲戒委員会ではなく、裁判官分限法に規定されている通り最高裁裁判所または各高等裁判所により開かれる。
憲法64条
1項 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2項 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。裁判官分限法3条
1項 各高等裁判所は、その管轄区域内の地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所の裁判官に係る第一条第一項の裁判及び前条の懲戒に関する事件(以下分限事件という。)について裁判権を有する。
2項 最高裁判所は、左の事件について裁判権を有する。
一 第一審且つ終審として、最高裁判所及び各高等裁判所の裁判官に係る分限事件
二 終審として、高等裁判所が前項の裁判権に基いてした裁判に対する抗告事件裁判官分限法4条
分限事件は、高等裁判所においては、五人の裁判官の合議体で、最高裁判所においては、大法廷で、これを取り扱う。
- 妥当でない 裁判官の懲戒に職務停止と減給はない。
裁判官分限法2条
裁判官の懲戒は、戒告又は一万円以下の過料とする。
- 妥当である 行政事件訴訟法9条1項の規定の通り正しい。
裁判官分限事件の決定に対する即時抗告 最大決平成10年12月1日
裁判官は、いかなる勢力からも影響を受けることがあってはならず、とりわけ政治的な勢力との間には一線を画さなければならない。そのような要請は、司法の使命、本質から当然に導かれるところであり、現行憲法下における我が国の裁判官は、違憲立法審査権を有し、法令や処分の憲法適合性を審査することができ、また、行政事件や国家賠償請求事件などを取り扱い、立法府や行政府の行為の適否を判断する権限を有しているのであるから、特にその要請が強いというべきである
- 妥当でない 「禁止の目的の正当性」「目的と禁止との間に合理的関連性」「禁止により得られる利益と失われる利益との均衡」の三点から判断される
裁判官分限事件の決定に対する即時抗告 最大決平成10年12月1日
裁判官に対し「積極的に政治運動をすること」を禁止することは、必然的に裁判官の表現の自由を一定範囲で制約することにはなるが、右制約が合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところであるといわなければならず、右の禁止の目的が正当であって、その目的と禁止との間に合理的関連性があり、禁止により得られる利益と失われる利益との均衡を失するものでないなら、憲法二一条一項に違反しないというべきである。
- 妥当でない 著しく品位に反する場合のみに限定されない。
裁判官に対する懲戒申立て事件 最大決平成30年10月17日
「品位を辱める行状」とは,職務上の行為であると,純然たる私的行為であるとを問わず,およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね,又は裁判の公正を疑わせるような言動をいうものと解するのが相当である。
- 妥当でない 裁判官を罷免する場合は両議院の議員で組織する弾劾裁判所である。また裁判官の分限裁判は懲戒委員会ではなく、裁判官分限法に規定されている通り最高裁裁判所または各高等裁判所により開かれる。
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